「正欲」

正欲 - Wikipedia

映画版はNetFlixで視聴可能です。

あらすじ:検事の寺井は「普通」の人。不登校となってしまった息子の教育方針をめぐり妻と衝突を繰り返す。契約社員の夏月は、特殊な性嗜好を持つ同志である佳道が地元に戻ってきたことを知り、旧交を温める。優れた容姿を持ちながら周囲と距離を置く諸橋大也のことが気になる八重子。仲を深めようと近づくが…。

物語は基本的にオムニバス形式で進んでいきますが、最後に寺井と夏月・佳道の人生が交差する構成になっています。ラストの、離婚調停中だと明かす寺井と、同志である佳道のことを真剣に思いやる夏月が対比されるシーンにおおむねテーマは集約されています。マイノリティはほとんど誰にも理解されず生き辛く孤独だが、それでも誰かを本気で愛することはできる。普通であることが幸せとは限らない。

各種マイノリティの自殺率は統計上マジョリティの3~6倍という現実に対して少々観念的にも思えますが、願いとしては共感できます。

なぜこの映画を選んだかといえば、最近デミロマンティックとフレイロマンティックについて少し考えていたからです。

デミロマンティック:「強い感情的な絆や、信頼関係が築かれている関係」の人に対して稀に恋愛感情を抱くセクシュアリティ

フレイロマンティック:深い関係性がない他者にのみ恋愛感情を抱き、その人を知るにつれて恋愛感情を感じなくなるセクシュアリティ

これらの概念は、「相手をよく知るにつれ幻滅し冷めてしまう」、「時間経過と共に恋愛感情が薄れていく」といった現象とは全く違うもので、恋愛対象がそもそも限定されているということです。リスロマンティック(相手と両想いになることを最初から望まないセクシャリティ)はいわゆる「カエル化現象(両想いになることを望んでいたのに、なったら相手に嫌悪感を抱く)」とは似て非なるものだ、というのと同じです。

自身の先天的な特性を自覚しないまま生きていると、生きづらくなります。一つ一つ自覚して対策していくしかないのでしょうね。

自分はどちらでもないけれど、安心感と継続的なコミュニケーション重視というか、「強い感情的な絆や、信頼関係が築かれていないと恋愛感情を感じにくい」という点はデミロマに近いのかなあ、などと考えていました。

恋愛話ばかりでもあれなので、自分が一番好きなマンガの話もしておきます。

『WOMBS(ウームズ)』

WOMBS - Wikipedia

概要:女性の妊娠する機能が兵器へと転用された世界で、軍の切り札として戦う女性たちの物語。

ミリタリーSFの傑作です。ロマンティシズムを排した戦争描写は必見。

野生動物になることも出来ず、人間社会で生きることもできない、あだ花のような存在を描いた作品です。主人公の子供に、ズルさや汚さまで含めて自分を重ねてしまう部分もあり、ラストシーンが忘れられない作品です。

医事課千野

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